シラバス

帰宅すると、テーブルの上に分厚い本が置いてあった。
「シラバス」とだけ書かれた表紙。
娘が通っている学校の「シラバス」だ。

大学等には無縁の私。
恥ずかしながら、シラバスなるものが何なのかを、
娘が専門学校に入学するまで知らなかった。
とはいっても、シラバスを慣用しているのはもっぱら米国で、
日本で流行し出したのは、近年のようだけれど。

その「シラバス」を初めて目にしたとき、
なんだかとても面白い魔法の本のような感じがして、
興奮したのを覚えている。
ギリシャ語であるその響きに、意味も無くワクワクしたのだ(単純)
わあ、もしや神話?伝記?すごいもの見つけてしまった!みたいな(笑)

シラバス、説明すると何とも味気ない。

【講義などの要旨。開講される科目について、
 事前に立てられた講義内容や開講期間中の進度などの計画を記した物。】

味気ないとはいえ、生徒にとっては大事なものらしい。
限られた学生生活の中で、何をどう計画的に学び、
最終的に自分の方向性、将来を決めていくのか。

*

計画表。
人生の計画表。
限られた人生を、効率よく生きる為の。

今、私は仕事をしながら、カレッジに通っている。
二週に一度の授業と課題。
なんともゆるりとした内容だが、三年間通う。
音楽に言葉を付ける、いわゆる、作詞の勉強だ。

長いなあと思っていたが、秋には卒業となる今、
その後の活動、娘の将来、そして恋人との今後、
など、様々なことが頭を巡る。

*

属するのが嫌で、これまで好き勝手に生きてきた。
安定を第一に考え、計画的に生きるなんて、どこかでつまらない、と思っていた。
現在通っているカレッジも、作詞を学びたい!と思った二日後には入学を決めていた。
もちろん今でも、感じるままに生きたいという「根本」は変わらない(^_^;)
だけど。

今、限られた残りの人生を、しっかり決めなければ、と心から思う。
「明日」は待っていれば勝手に「やってくるもの」じゃなく、自ら「決めるもの」。
焦るつもりはないけれど、無駄をなくし、一秒一秒を有意義に味わうために。

もしかすると生まれて初めて、
心の中に「シラバス」を必要としているのかも知れない。
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引力と長い髪

髪を、伸ばしている。
気がつけばいつの間にか、腰の辺りまで伸びている。

休み中に引いてしまった風邪のせいもあってか、
なんだか全身が重たい日々。

外を歩いても、一歩前へ進むごとに、
地球が私を欲しがっているみたいで、
その引力は踵から腰骨を伝い、
この長く伸びきった髪先を引っ張る。

よして、と心の中で願う。
容赦ない引力。息が詰まるようだ。

ふと周囲を見回せば、疲れた顔が並ぶ満員電車。
それでも、駅のホームへ降りた瞬間に、何かを目指して人は歩き出す。
どこへ?
はっきりとは分からずとも、
やっぱり人はどこかへ向かっているように見える。
引力に負けず、重い荷物を背負い、深い想いを胸に抱いて。

そうだ、自分の足でしっかりと立ち、
歩くことができるだけでも、有り難いのだ。

髪の重さに唸る自分の体が、歯がゆくなった。

引力。いずれはその力のままに、土に返る日がやってくる。
それまでは、軽やかに歩いていたい。

今夜はゆっくりとバスタブに浸かり、
丁寧に髪を洗おう。

余分なものをすべて洗い流して、
少しだけ引力から解放される時間を自分に与えよう。

天の数歌

ゴールデンウィークの最中だというのに風邪を引いてしまい、
こんこんと咳をしながら、画面を彷徨っていて、
ふと目に留まった、「元気の出るおまじない」

その言葉に何となく心を癒される。

『ひとふたみよ いつむよなな やここのたり ふるべゆらゆら ふるべゆらゆらと ふるべ』

『ひとふたみよ いつむよなな やここのたり ももちよろず』

そう、これは数え歌。

意味も分からず、なるほどなあと、納得がいく不思議。

目を閉じて、ひとつ、ふたつ、とゆっくり数を数えると、
なんとなく心が落ち着いてくる。

お風呂で数を数えて身体を温めたり、かくれんぼで目隠しで数を数えたり、
そんな幼い記憶も手伝ってか、心と身体で、ずっと腑に落ちるおまじないだった。

おそらく、呼吸や時間の流れをきちんと感じることや、
数えることでゆっくりと満ちていく感覚も、
効果のひとつかな、なんて勝手に想像しながら、
そのおまじないを調べてみると、
想像以上に深い意味合いがあって、ビックリ!

これは「天の数歌」(あめのかずうた)と言って、
れっきとした日本古来から伝わる『祝詞』だそうだ。

もちろん、一(ひと)から万(よろず)まで、
ひとつひとつに意味が込められている。
一(霊、火、日)
二(力、息)
三(体、元素)……

のように。

簡単に言うと、この数え歌には、
天地創造のプロセスが込められている、ということらしい。
故に、天の数歌。なるほどなあ。

人も自然の一部。
そしてその自然、世界と私達を結んでくれる「言葉」
祈りは言霊になり、そして人の支えになってきた。

改めて、言葉の重みを感じた。

ひとつひとつ、こなしていこう。
まずは風邪を治すことから!


プロフィール

夏 瞳

Author:夏 瞳
シテキナルモノ を、
書こうとする人です。
音符にも言葉を、
のせたりします。

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