ジゲンとミミとお星様




めくるめく、ウサギの夜。
夜空を見上げるジゲンに、星粒ひとつが囁いた。

 お月様のうしろから僕が顔を出したとき
 願いをひとつ叶えてあげる

ネガイ? 願い? ねがい?
幸せなジゲンには、願いの意味が分からない。

 願いってなあに?

 欲しがる事さ

 欲しがるって何を?

 それはみな様々さ
 君みたいなウサギなら
 冬でも温かい寝床とか
 一生育ち続ける人参とか
 欲しいものならたくさんあるだろう?

 ええ?
 寒い夜にはミミが抱き締めてくれるし
 人参はたまに食べるから美味しいんだよ

ジゲンはいささか不思議顔。
お星様はあきれて月のうしろにかくれんぼ。

 あきれたウサギ! また顔を出すよ

ジゲンはものすごく考えた。
ネガイって何だろう。

 僕には丈夫な足がある
 僕には長い耳もある
 つぶらな瞳はミミのお気に入り

 一体何を欲しがればいい?

鼻をひくひくさせていると、
ミミがおやすみを言いにやってきた。
はてさて、なにやら浮かぬ顔。

 可愛いジゲン
 どうしよう
 遠くの街へお引っ越しなの
 ジゲンは連れてゆけないの

おっきな瞳から、涙がぽろぽろ。
これにはジゲンも驚いた。

 なんだって!

 いやだいやだいやだ
 生まれた時から一緒で
 死んでしまうまで一緒で……

 そうだ!
 僕はミミが欲しい

 お星さま
 これが願い
 ミミを僕におくれ……!

お星様が再び顔を出した夜、
ジゲンは心の中で精一杯お願いをした。
お星様は得意げに微笑んだ。

 それならミミを瓶詰めにしてやろう

 ええ? ダメダメ!
 それじゃ抱っこしてもらえない

ジゲンはものすごく考えた。
つぶらな瞳が涙で濡れてしまうまで。

 ねえお星さま
 願いって
 欲しがることなんかじゃないんだよ
 それでも何かくれるというなら
 僕にひとつ「言葉」をおくれ

引っ越し前夜の青い夜。
ミミは不思議な夢を見た。

枕元に寄り添うジゲンが、
お鼻をひくひくさせながら、

「あ り が と う」

って呟いたんだ。

* * * * * * * * * * * * *

友人宅で飼っているウサギの「ジゲン」
いつか会ってみたいなあ。
写真は、彼女が作った、消しゴムはんこの「ジゲン」(^_^)
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プロフィール

夏 瞳

Author:夏 瞳
シテキナルモノ を、
書こうとする人です。
音符にも言葉を、
のせたりします。

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