留まる。


今ここに留まるなんて、本当は無理かもしれない。

この文字を打っている最中にも、
洗い髪の水分は蒸発し、
食物は胃袋で分解され、
細胞は入れ代わり、
気がつけば今日が明日になっている。

今ここ。

今ここ、の瞬間なんて、本当は存在すらしていないのかも。
時間が止まらない限り、「今ここ」はありえないとたら……。
そんなふうに考えると、まるで自分が、
止まった瞬間に死んでしまう回遊魚のような気がして、焦る。


でも、不思議な事に、
打った文字は打った瞬間に留まってくれる。

眠たい と打った文字は、
眠たい、と打ったその瞬間に留まったまま、
永遠に眠たがっている。

あなたが好きです。
と書いた文字は、その瞬間に貼付けられ、
その瞬間は永遠に「あなたが好きです」になる。


言葉で出来たもの。

手紙や文章や日記、そして歌も、
意味をなす言葉は、生み出された瞬間に永遠を手に入れるんだ。


今夜は、迎える春を大事にしよう、と思った。
その気持ちを永遠にしたいから、書き記しておこう、と思った。

叶わない事や身動き出来ない事もある。
けれど、今ここで、「迎える春を大事にしよう」と書いておく事が、
流されない自分でいる為の、ひとつの方法だと思うから。



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夏 瞳

Author:夏 瞳
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書こうとする人です。
音符にも言葉を、
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