『Na-Ni-Ka』
ずっと見ているのに分からないものがある
見つめれば見つめるほど困難になり
いずれ気付く
目ではダメだと
* * *
2016年10月20日木曜日 3回目となる
アド リビトゥム ライブ パフォーマンス『Na-Ni-Ka』を観て
(企画/演出 如月愛)http://www.heart-to-art.net/nanika.html
私にとっての始まりは一冊の本
「夏さん、星の王子様のフランス語の対訳本を持ってないですか?」
如月愛さんからメッセージが届く
次は星の王子様か…!ぱっと辺りが明るくなったような気がした
あいにく対訳本は持っていなかったのだけど
大好きなお話なのでつい嬉しくなってしまい
すぐにアマゾンで購入し彼女のもとへ送った
「大切なものは目に見えない」
彼女の心に響いたこの言葉に光が射す
* * *

開場した始めからすでに
中央で横たわる舞踏の睦美さんを見た時
その気配の消し方からすぐに本物だと分かった
そして闇の中
藤田三保子さんの「声」で始まる
一本の槍のように飛んで来て「軸」を創る
(※星の王子様の一節がフランス語で流されました)
パフォーマンス半ば
睦美さんが上半身何もまとっていないことに気付いたその時
裸はまだ早いのではないかと正直不安が走った
その姿は完全なる植物
植物が意味する無意識としての生命
それは宇宙に繋がる
宇宙と
ただ一人
愛さんの挑戦と覚悟か
けれど次第に
息を呑んで見守る心境が一変する

分からないものを泳がせる勇気
感覚を呼び起こす為の
儀式であって決して儀式ではない
それは人が人のまま
何処まで回帰できるかという試みでもあり
源泉を覗く行為だった

彼女の野生を解放させる「見せ方」が
見事にその静けさと対峙する
背中合わせの会話が生まれる
一対一ではない会話だった
それは完全に 一 対 宙 だ
きっとサンテグジュペリも
この光景を見たに違いない
砂漠の中で
今回の彼女の情動は
生きることにそのまま直結していたような気がしてならない
銀色のパッションと
睦美さんの神聖
共存そして共演
波紋音の演奏家でも知られる
永田砂知子氏という手練れが
生まれた世界から純度の高い空気が逃げないよう
場を俯瞰で読み取り音で守る
不純物を沈殿させ
上澄みの音で呼応するトランペットの小西徹郎氏
プロだな と感じた
そうして出来上がった中で
玄人でも素人でもない
表現者である如月愛が
存分に遊ぶ

愛さんは素晴らしい遊び手で
彼女がよく遊ぶと空間が笑うのだ
その刹那はとても美しい

あっという間のパフォーマンスだった
照明や舞台の細部にまで目をやるときりがないので
せめて心に焼き付いたことだけでも
メモ代わりに記しておきたかった
* * *

後日
愛さんから送った本が戻って来た
一部分がマスキングテープで剥がれてしまったと
お詫びの手紙が添えられていた
そして剥がれてしまった「一節」と
パフォーマンスで生まれた「欠片」を使って
ひとつの作品を仕上げ贈ってくれた

自然に対する畏怖の中に
一滴の露を求める切なさを
私はいつも彼女に感じる
どんなに激しく時化ても
それは宇宙の向こうであって
誰も傷付けず
ただ懐かしく
ただ新しいのだ
生命の新しさと穢れを
背負いながら生きる
彼女の生々しい線が私は好きだ
未知の可能性を秘めた彼女は
未知なまま飛躍する「詩」に包まれている
どうかこれからも
名前のつけられない水を
飲み続けて欲しい
生まれた「Na-Ni-Ka」に感謝を込めて
2016.11.5 夏 瞳
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